卸売業向けインストラクションコース  【コンテンツ】

卸売業の情報システム − 先進情報システム運営の前提条件編

第43回「マニュアル作成(その2)」

システムを運営していく上で最も重要になるのがマニュアルです。マニュアルは操作マニュアルと運用マニュアルに分かれます。運用マニュアルは場合により運用手順マニュアルと運用規則マニュアルに分かれることがあります。運用マニュアルは稀に作業生産性指針/作業精度指針/作業コスト指針/サービス・サポート指針/経営指標指針などを中心に記されるバージョンが作成されることがあります。このマニュアル作成についてカストプラス流にアレンジしてご紹介します。

2.マニュアル作成

(2)作業指示と運用の進行
事務作業や物流作業が手慣れてくると、一部の作業については自分で判断して開始するようになります。準備すべきことや何をきっかけに始めるかなど「言われなくてもわかる」ことが大事になります。逆に指定された作業については必ず上長の指示を仰いで開始します。終了や完了でも上長に報告したり次の工程の部門に互いに確認しながら渡します。勝手に始めたり終わらせたりしません。
それがシステム化されて画面で確認ができるようになったり、プログラムで制御されていてサインや合図を送ることが要らなくなったりします。その時に社員の皆さんの間で勘違いが起きやすいことがあります。「画面で指示が出せれば誰にも確認しなくて良い」のではなく判断のプロセス自体は機械的であってもなされているのです。若手の社員さんは「画面にこれが出ればOKなんです!」と説明してくれます。判断が消えてなくなり画面上で処理の可否を確認するという個人的な雰囲気に閉じるようなイメージで理解しているのでしょう。別の企業に行くと「コンピュータがこの条件とあの条件を自動的に調べて判断してくれています!」と嬉々として説明してくれることもあります。頼もしい限りです。
こうしたことについては社内教育を徹底しなければならないでしょう。教育の段階ではっきりさせておかないと危険な状態で部門担当者が組み合わされて、馴れ合いや阿吽の呼吸で業務を遂行してしまうこともあります。またこれをマニュアル化せずに作業者の熟達度に依存した状態で日々運用するようなやり方を放任すると、ひとたびインフルエンザの社内での大流行などに遭うと、業務の流れが大きく崩れ、会社に大きな損失を与えることになります。

指示の出し方と受け方、作業手順や道具・治具【ツール】と作業の終了や例外対応などをはっきりとさせておくと業務の流れの崩れをかなり防ぐことができます。

@手順:
できる限りの図解説明で作業手順を解説します
また、作業スピードの目安についても記入します【作業毎に生産性=1時間一人あたり何ピースなどと明記する】
このスピードは目標をもってもらうという意味で書きます

A指示:
指示の出し方と受け方:
誰から何によって指示を出し、受けるのか?について示します
流れの単位として、商品、人、搬送装置、情報などの区別がつくようにします
どこから来てどこに行くのか?を明確に示します
作業に必要な人数を明記します(生産性の項目と連関します)
シリアル作業からパラレル作業、パラレル作業からシリアル作業に変換のスピードについて表示します

B終了:
作業終了の条件を示します
繰り返し単位の終了状態とその時のチェック項目を示します
バッチ単位,一日単位などのその作業の終了タイミングについて記述する
さらに一日の終わりには清掃や整理整頓などが必要となるのでその説明もします
いずれの単位の終了時でも次の作業者がいる場合、何をどういう状態で渡すかを明記しておきます
    例)指示書の中で自分の持ち場ロケーションの商品をピッキングし、オリコンに入れ、指示書にチェックマークを記入した状態で同じくオリコンに入れて次の人に渡す
C例外:
例外対応についてイレギュラーパターン別にどう対処するのかを説明し、その想定外の例外が発生した場合には誰にどうやって連絡し、指示を仰ぐか?を記入します
例外対応については『Iイレギュラー対策への考慮』を参照ください

(続いて作業の補助・支援についても記述します)
D道具:
作業の際に使用する道具について説明します(作業性や安全性を向上させる狙いで治具を使用する場合があればそれについて詳細に記します)
E備品:
備品などはどこに置いてあるか?消耗備品と耐久備品があり、消耗品の補充交換方法はどうするか?などを記します
保管責任者のミッションについても説明します
F設備:
設備ごとの業者の連絡先をわかりやすく記した上で、エレベータなどは法定点検がありますのでまずは決まり事を解説し、続けて定期メンテナンスが必要な設備や消耗品の補充や予備部品の保管、設備の維持に必要な空間やエネルギーや時間帯などについて記述します
G補足:
マニュアルの番号(改版,全体マニュアルとの関連/別紙との関連など)その作業部署の責任者名,連絡先,作業者の氏名などを明記します

(さらに問題点の対処について記述します)
H隘路:
ボトルネックの考慮
 @一人で止めるボトルネック(配車計画など)
 Aシリアル→パラレル、パラレル→シリアル変換ネック(遅い作業者、特定のエリアだけに出荷量が集中)
 B設備・備品の不足(設備が壊れた場合など)

Iイレギュラー対策への考慮
 @性能見込み違い【コンピュータの処理スピードが遅い、作業スピードの個人差がある、物流機器で思ったほど物量が運べない】
 Aミスの発生【指示段階でのミス、作業上の作業者によるミス、作業者に判断させることによるミス】
 Bトラブルの発生(長時間の停電、コンピュータの故障、コンベアやバーチレータの故障)
  トラブルの原因と対策としては
   ・耐用期間や回数を越えたケース→寿命を予測し管理者がトラブルの発生する前に部品交換する
   ・機器の突発的故障      →修理をどこに依頼しどのくらいの待ち時間で来てくれるのか?
                         その時間に応じて対策案をいくつか用意しておく
                        応急処置はないのか?
   ・代替のきく機器の故障    →運用方法を変えることによる対処
   ・作業者のケガ
   ・地域の小中学校の保護者参加の大きなイベント等で一斉にパートさんが休む場合

J企業としての行動/業務等の制限/抑制について
システムの作り方で会社が考える方向へ誘導しようとするアイディアがありますが、近年のスマート系のシステム化にも見られるように“抑制=操作や手続きの困難さ”という構図はもはや流行りません。操作性はあくまでも最高にスムーズに実現し“抑制目標と自動監視+評価”で乗り越えます。業務の具体例は『Aランク前後の返品の抑制』や『得意先要望の単純値引きの抑制』などです。おわかりいただけたでしょうか?
運用上でも制限/抑制目的で手間ひまをかけることで制限/抑制違反の発生が防げると考える文化が残っていることがあります。デジタル化で監視や評価を実現するならば、面倒なことはやめにしましょう。行動や業務等の制限/抑制を訴える場合にはマニュアルに明記します。

つづく(次回は第2部 3.メンテナンスについて です)

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